ピルの副作用・不妊の不安(原因と対処法)

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ざっくりまとめると
ピルを飲んでも不妊にはなりません。服用をやめてから正常な生理がくるまでの期間は、平均して3か月以内です。
妊娠中にピルを飲んでしまっても、胎児には影響がありません。しかし、母体に影響がみられる恐れがあるため、妊娠に気がついたらピルの服用はひかえてください。
ピルを飲む以前のような安定した生理周期に戻すためには、生活習慣の見直しが大切!適度な睡眠や運動、栄養バランスの取れた食事を心がけましょう。

ピルは有効な避妊薬であるほか、婦人系の病気の治療に使われることもあります。そんなピルですが、服用を始める女性たちの間では「ピルを飲むと不妊になるのでは?」という心配が後を絶ちません。

なぜピルを飲むと不妊になるといわれているのでしょうか?その理由を解説しながら、ピルと不妊の関係について紹介します。

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ピルを飲んでも不妊にはならない!


結論からいうと、ピルを飲んで不妊になることはありません。確かに、ピルを飲むと排卵が止まり、妊娠しない体になります。しかし、だからといって、ピルをやめたあとまで無排卵状態が続くことはないのです。

ピルは、本来の排卵機能には直接作用しません。ピルの服用をやめると、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンが体内で元のバランスに戻ります。すると、そのホルモンバランスの乱れが影響し、ピルをやめた数日後に出血が起こります。その時点で子宮内がリセットされ、早ければ翌月から正常な生理周期に戻るのです

ピルの服用を中止したあとの妊娠率は、以下の表のとおりです。服用をやめてから2周期以内(2回目の生理を迎えるころ)には、約20%の女性が妊娠しています


出典:ピルを知ろう / ピル・わかるページ

この表からも分かるように、ピルを飲んだからといって不妊になることはありません。ピルの服用にかかわらず、健康な女性なら妊娠率はみんな同じなのです。

ピルをやめてから生理がくるまでおよそ3か月


ピルをやめれば、また自然に生理がくるようになると思っていたのに、いつまで経っても生理がこない……。こんな悩みを抱えている女性も多いことでしょう。

ピルをやめれば、翌月から正常な生理周期が戻ってきますが、これはあくまで「早ければ」の話です。通常、ピルをやめてから生理がくるまでの期間は、平均して3か月以内となっています。ピルの服用を中止したあと、自然な生理がこなくても、最低でも3か月は様子を見てみましょう。

ピルを服用していると卵巣に休みグセがつくってホント?

「長期間ピルを服用していると卵巣に休みグセがつき、正常な排卵が行われなくなる」といった噂がありますが、そのようなことはありません。実際、年単位で継続してピルを服用していても、ピルの服用を中止してから子どもに恵まれた女性も数多くいます。

でも、ピルをやめてから3か月以上が経っても生理がこない場合は注意が必要。もしかしたらピル以外の病理的な理由で生理がこないのかも……。様子を見ても生理がこない場合は、すぐにお医者さんに相談してください。

妊娠中にピルを飲んでも胎児に影響なし!


妊娠していることに気づかずピルを飲んでしまった、というケースも意外に多くあります。ピルは合成ホルモン剤であるため、何か胎児に影響があるのではと心配になりますよね。

結論からいうと、ピルの服用が原因で胎児に影響が出ることはありません。このことは、国内でも海外でも統計がとられています。もし、ピルの服用期間が長かったとしても、妊娠できたということは、すでにピルの影響がなくなっているということです。胎児に影響することはありません。

実際に、ピルの服用を中止した女性と、ピルを服用したことがない女性がそれぞれ出産した子どもの比較研究も行われています。結果は以下の通りです。

新生児の奇形は、ピル服用歴の婦人からの新生児では、(中略)計10例であり、奇形率は3.6%であった。一方、対照からの新生児数は双胎があったから282例となり、(中略)奇形率は1.1%となった。しかし、ピル服用歴婦人からの新生児奇形率と対照のそれの間に有意差はなかった。

出典:経口避妊薬服用後妊娠による心身障害児発生の防止対策に関する研究―経口避妊薬服用後の妊娠に関する疫学調査― / 国立保健医療科学院:PDF

この研究では、ピルを飲んでいた女性の「新生児奇形率」が、ピルを飲んだことのない女性と有意差がないとされています。つまり、ピルを服用したことがあったとしても、それが奇形児を出産する原因にはならないということです。

とはいえ、ピル服用中に妊娠が発覚した場合は、ただちに服用を中止しましょう。ピルが胎児に悪影響を及ぼすことはありませんが、母体に影響がみられる場合があります。妊娠している時は、それだけで女性ホルモンが多量に分泌されている状態です。そんな時にピルを服用すると、女性ホルモンがさらに増えてしまうのです。

女性ホルモンが増えすぎると、結果として子宮がんや卵巣がんを発症するリスクが高まってしまいます。母体への負担、病気へのリスクを下げるためにも、妊娠が分かった時点でピルの服用は控えるようにしましょう。

生理周期を早く戻すために生活習慣を見直そう


ピルを飲む以前のような安定した生理周期に戻すためには、生活習慣の見直しが大切です。生理がきちんと来ない原因は、生活習慣の乱れにあります。この乱れを正すためにも、以下のことに気を付けて生活しましょう。

生活習慣を正す方法
  • まとまった睡眠時間を確保する
  • 栄養バランスの取れた食事をとる
  • 適度な運動をする
  • できるだけストレスをためない
  • ぬるめのお湯につかってリラックスする

ピルをやめたあと、なかなか生理が始まらない場合は、上のリストに挙げられていることから実践していこう!

不妊の不安は解消しましたか?

「ピルを飲むと不妊になる」という副作用は、実際のところ起こりません。ピルを長期間にわたって服用した人でも、やめればすぐに妊娠が可能で、健康な赤ちゃんを産めます。

生理周期を早く戻したい場合は、生活習慣を正すところから始めてみてください。もし、ピルの服用中止から3か月が経っても生理が始まらない場合は、ピル以外の理由が考えられます。すぐにお医者さんに相談してみましょう。

参考文献・参考サイト

ピルの副作用・不妊の不安(原因と対処法)は、以下の資料やサイトを参考に作成しました。